株式会社と合同会社の相違点

1.所有と経営

<株式会社>
(原則)完全分離
 株主が会社を所有し、株主から選任された取締役が経営を行います。株主でない者も取締役になれます。(公開会社でない場合は、定款で取締役を株主に限定することもできます。)

<合同会社>
(原則)所有と経営は同一
 出資者(社員)全員が会社を所有し、業務執行権、代表権を持ち経営を行うという考え方です。
 定款で、業務執行社員、代表社員を定めることができますので、逆に業務執行権のない社員という形態も取れます。(出資はするが経営には口を出さないという考え方です。)


2.責任

<株式会社>
間接有限責任
株主は、出資した額以上に会社に対して債務を負うことはありません。会社が債務を負った場合も会社債権者から債務の返済を求められることはありません。

<合同会社>
間接有限責任
有限責任社員は、出資の価額を限度に合同会社の債務を弁済する責任があります。


3.役員の任期

<株式会社>
(原則)取締役の任期は最長2年
 公開会社でない株式会社は、定款により最長10年まで可能

<合同会社>
(原則)社員に任期はありません。
 定款により、業務執行社員や代表社員の任期を定めることは可能です。


4.代表者

<株式会社>
(肩書)代表取締役
 株主総会、取締役会で選任されます。(選任の方法は定款で定めます。)
 代表取締役は、取締役の中から選任されるため、任期があります。

<合同会社>
(肩書)代表社員
 原則、出資者全員が代表者となりますが、定款で代表者(代表社員)を定めることができます。任期は原則ありません。


5.意思決定

<株式会社>
 会社の重要事項は、株主総会で決議します。決議に必要な表決数(過半数、3分の2以上など)は会社法に定められています。

<合同会社>
 特に定款に定めがない場合は、全社員の過半数で決まります。定款で業務執行社員に限定したり、表決数を過半数以上とすることも可能です。


6.機関

<株式会社>
 会社法で、株主総会、取締役会、監査役会、委員会などの機関が定められています。

<合同会社>
 特にありません。定款で社員総会などの機関を設置することは可能です。

条文なし

7.総会

<株式会社>
 毎事業年度(1年)終了後一定の時期に、定時株主総会を開催しなければなりません。

<合同会社>
 機関がないため、総会開催の必要はありません。定款で社員総会を定めた場合は、規定どおり開催します。

条文なし

8.議事録

<株式会社>
 株主総会の議事については、議事録を作成し、10年間本店に据え置かなければなりません。

<合同会社>
 特に議事録作成の義務はありません。必要に応じて決定書などの形で記録します。

条文なし

9.会社設立(定款)

<株式会社>
 公証役場で定款の認証を受けなければなりません。認証は1度だけで、会社設立後、定款変更しても公証役場での認証は不要です。

<合同会社>
 定款の認証の必要はありません。印紙(4万円)を貼り付ける必要があります。(電子定款の場合は不要です。)

条文なし

10.計算書類の公告

<株式会社>
 定時株主総会終結後、遅滞なく貸借対照表(大会社は貸借対照表と損益計算書)を公告しなければなりません。

<合同会社>
 計算書類公告の義務はありません。定款で公告を定めることができます。

条文なし

11.設立費用(登記費用)

<株式会社>
 (最小費用)15万円
 資本金の額×1000分の7を基準に、15万円に満たないときは、申請件数1件につき15万円

<合同会社>
 (最小費用)6万円
 資本金の額×1000分の7を基準に、6万円に満たないときは、申請件数1件につき6万円


そもそも会社とは
 「会社は、法人とする」と会社法第3条に規定されています。法人とは、自然人(人間)以外で、法律により「人」とされているものをいいます。民法第1条に「人」の権利に関する定義がなされており、「私権」は公共の福祉に反しない限り、権利を行使し義務を履行できるとされています。そして、私権は信義に従い誠実に行い、その濫用は認められません。
 民法第34条に法人の能力について「法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う」と規定しています。
 つまり会社とは、定款の目的で定めた範囲内で人間と同様の権利を行使し義務を履行する「人」ということができます。
 会社は、人と同様に権利行使できるといっても、実際には抽象的な存在であるため、それを動かす機関が必要となります。それが、株式会社では「取締役」であり、合同会社では「社員」です。
 よく「会社を私物化する」ということを聞くことがありますが、それは会社が「人」であることからきています。他人の物を勝手に使ったり、奪ったりすることはできません。従って経営者であっても会社の財産を勝手に使うことはできないのです。
 経営者は、会社の信用や財産を使い会社の業績を伸ばすことに集中し、共に成長していく関係構築を目指すことが、望ましい形と考えています。