現物出資とは

今ではポピュラーな現物出資も、会社の財産基盤を危うくする出資形態として厳格な要件がありました


 現物出資とは、会社法第28条に規定されている変態設立事項の一つで、発起人が株式の対価として金銭以外の譲渡可能財産を拠出してする出資の形態です。金銭以外の財産による出資は、設立段階、設立当初の会社の財産的基盤を危うくする可能性がある出資に当たります。そのため厳格な規定の下、出資が認められてきましたが、平成2年の商法改正により要件が緩和され、パソコンを現物出資して会社を設立することも可能となりました。
 なお、変態設立事項は、①現物出資 ②財産引受け ③発起人の報酬その他の特別利益 ④設立費用(定款の認証の手数料その他会社に損害を与える恐れのないものとして法務省令で定めるものを除く)を指します。

 

要件(原則)

定款にその旨を記載し、裁判所が選任した検査官による調査が必要


 発起人は、定款に変態設立事項(現物出資など)の記載又は記録がある時は、公証人の認証の後遅滞なく、当該事項を調査させるため、裁判所に対し検査役の選任の申立てをしなければなりません。検査役は必要な調査を行い、結果不当とされた場合、裁判所は定款変更の決定を出します。
 変態設立事項の変更に不当な発起人は、即時抗告により裁判所の決定を争うことができます。また、決定の確定後1週間以内に限り、各発起人は、事故の設立時発行株式の引受けの全部の意思表示を取り消すことができます。(通常、発起人には株式引受の取り消しができません。)
 また発起人全員の同意によって、決定の1週間以内に限り、決定によって変更された事項についての定めを廃止する旨の定款変更をすることで、設立手続きを続行することもできます。つまり現物出資せずに金銭による出資に代えて設立手続きを行うということです。 

要件(新規定)

平成2年商法改正により、いずれかの要件を満たせば、検査役の検査を省略できます。ほとんどの現物出資は、この要件を使えます。


① 現物出資または財産引受けの目的財産の定款に定めた価額の総額が500万円を超えない場合
② 当該財産が市場性のある有価証券であって、定款に定めた価額がその市場価格として法務省令で定めた方法により算出されるものを超えない場合
③ 現物出資または財産引受けにつき定款に定めた価額が相当であることにつき、弁護士、弁護士法人、公認会計士、監査法人、税理士、税理士法人の証明(目的財産が不動産である時は不動産鑑定士の鑑定評価を要する)を受けた場合

 

出資できる財産

著作権や特許権、営業権などの無形の財産権も出資の対象とすることが可能


問題なし 動産、不動産、鉱業権、特許権・著作権などの無形財産権、動産・不動産の使用収益権、国債、社債、譲渡制限のない株式(上場株式)、営業権など
要検討 譲渡制限のある他社の株式、会社に対する債権
 
 現物出資の目的物としては、一般に動産、不動産、鉱業権・特許権・著作権などの無体財産権、動産・不動産の使用収益権、国債、社債、譲渡制限のない株式(上場株式)、営業権などが認められます。これらの財産には金銭的な価値が認められなければならないので、証明が必要です。営業権や特許権などの無形の財産については、契約書などで裏付けます。
 譲渡制限のある他社の株式、合同会社などの有限責任社員の持分も取締役会や株主総会、社員総会の必要な同意を得られれば認められます。
 会社に対する債権(社長や金融機関などが会社に貸し付けている貸付金など)を出資の目的とすることも可能です。

ケーススタディ

現物出資を活用すると資金を移動させることなく資本充実が可能


ケース1 パソコンを現物出資する
 個人で購入したパソコンを現物出資できます。購入直後であれば、価額は領収書で証明します。期間が経過している場合は、減価償却した価額を用いれば問題ないと考えます。
 
ケース2 営業権を現物出資する
 個人事業主の時に、取引先から購入した物品販売権(営業権)を現物出資することも可能です。営業譲渡契約書が裏付けになります。
 
ケース3 社長の貸付金を現物出資する
 社長が会社に対して貸し付けていた債権を資本金に振り替える(現物出資)することも可能です。